住宅ローンを利用する際には、「何年で返済するのか」という返済期間を決める必要があります。
月々の支払額以外にも利息を含めた総支払額に影響します。
月々の返済額を減らしたいのであれば、返済期間を長期間に設定するケースもあるでしょう。
とはいえ返済期間については、住宅ローンを組む時の年齢や完済時の年齢、収入の波や教育の費用なども考えて決める必要があり、自分に適した返済期間を見極めるのはなかなか難しいです。
そこでこの記事では、住宅ローンの返済期間を決めるうえで必要な知識についてポイントを解説いたします。
こんな方におススメ!
・これからマイホーム取得を考える方
・住宅ローンのことをしっかり理解したい方
・期間は長いほうが良いのか短いほうが良いのか悩んでいる方
【住宅ローンの期間はどうやって決めたらいいの?】
住宅ローンの期間って何年くらいがいいですか?
非常に個別性がある奥が深い質問ですね。
私は出来るだけ長期にすることをお勧めしています。
一般的には35年ですか??
そうですね。いまは50年ローンというものありますよ
50年!?死ぬまで働くと考えるだけでストレス!絶対に嫌です!
マイホーム購入がストレスの種になっては本末転倒ですもんね
色々選べるからこそ、何年にするのが良いか難しい…
それでは住宅ローンの仕組みを理解して
自分に合った期間を選びましょう
住宅ローンの特徴
│住宅ローン支払い終了年齢
住宅ローンを支払い終えることを完済(かんさい)と言います。
その完済年齢は「80歳の誕生日まで」としているところが多く、「85歳の誕生日まで」としている銀行もあります。医療の発展などにより人生100年時代と言われる風潮から、金融機関の設定する完済年齢は徐々に引き上げられていくかもしれません。
完済年齢80歳の金融機関で住宅ローンを組む場合
(1)自分が35歳の場合 80歳―35歳=45年
→45年ローンまで可能
=金融機関に45年以上の住宅ローン商品があれば45年の期間で組むことが出来ます。
(2)自分が50歳の場合 80歳―50歳=30年
→30年ローンまで可能
=35年ローンを組みたい!と考えても30年の期間しか組むことが出来ない
│住宅ローンの借入れ期間
住宅ローンの借入れ期間について
「後から短くすることは出来るが長くすることは出来ない」
例えば、最初に25年間という期間を選択し住宅ローンを組んだあと「子供の教育費の支出と重なって支払いがしんどいなー。よし、期間を5年延長してもらおう」といったケースです。
これは原則として出来ません。
一方で、最初に35年という期間を選択し住宅ローンを組んだあと「思ったより手元にお金が残るな。すぐにお金が必要となるイベントも無いし、期間を5年短くしよう」といったケースです。
これは「繰り上げ返済」という方法を使うと可能です。
│繰り上げ返済について
毎月の返済額とは別に、まとまった額を返済する「繰り上げ返済」という方法があります。
繰り上げ返済したお金はすべて元本(借りた額)のみに充てられます。
繰り上げ返済には
返済期間を短縮する「期間短縮型」
毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」
の2タイプがあります。
ともに将来の支払い利息は減りますがよりその効果が高いのは「期間短縮型」です。
きかん たんしゅく? へんさいがく けいげん??
実例でみてみましょう
5000万円の住宅ローン、金利0.5%、期間35年で住宅ローンを組む
→月々 約13万円、総返済額5450万円(利息が約450万円)
5年後に200万円を繰り上げ返済した場合
期間短縮型 | 支払額軽減型 |
期間短縮:1年6か月 月々の支払額 ±0円 利息軽減額:約30万円 | 期間短縮:0か月 月々の支払額:-6千円 利息軽減額:約15万円 |
利息の軽減に効果があるか、月々の返済に効果があるか、の違いですね
その通りです!
どっちを選んだらいいか迷うな~
総返済額を減らしたいのであれば「期間短縮型」
いま使えるお金を増やしたいのであれば「返済額軽減型」
の選択が良いと考えられます。
ちなみに金融機関により繰り上げ返済の条件は異なります。
「いつでもOK」「月に1回だけOK」「いくらでもOK」「100万円以上からOK」
「手数料無料」「ネット手続きなら無料」「1回あたり1万円」
金融機関により繰り上げ返済の条件は異なりますので確認が必要です。
│団体信用生命保険(通称:団信)に加入する
住宅ローンを組む場合、原則として団体信用生命保険(通称:団信/だんしん)に加入します。
住宅ローン返済中にご不幸ごとや障害を負うなど所定の状態となった場合、それ以降の返済が不要になる保険です。
具体例
住宅ローン5000万円
金利0.5%
期間35年
で住宅ローンを組んでいる場合
・10年後:ローンの残り(残債)約3650万円
→この時点でご不幸ごとがあれば、以降3650万円の支払いは不要
・20年後ローンの残り(残債)約2240万円
→この時点でご不幸ごとがあれば、以降2240万円の支払いは不要
主人が亡くなると返済できなくなっちゃう!と不安に思ってました!
家族にはローン支払い済みの住宅を遺せるということですね
なるほど、保険という言葉が入っている意味が分かりました。
保険ということは、住宅ローン以外に別で支払いがいるんですか?
いえ、保険料の支払いは不要です。
団信の保険料は金融機関が保険会社に支払っています。
そのため、住宅ローンの支払い以外に団信の保険料支払いは“不要”です。
「金融機関に支払う利息の中に団信の保険料も含まれている」と表現するの方がイメージしやすいかもしれません。
ちなみに、繰り上げ返済を100万円した翌日に亡くなった場合、
100万円は返ってきますか?
いいえ、返ってきません
えぇ!
あくまで、ローンの残り(残債)が無くなる保険ですので
繰り上げ返済したお金は返ってきません。
繰り上げ返済は利息を軽減出来たり、月々の支払いを軽減できるといった大きなメリットがあります。一方で、一度繰り上げ返済したお金を返してもらうことは出来ません。
「本当に今このタイミングで繰り上げ返済するのが最適なのか?」
については慎重に判断したいところです。
│住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除・住宅ローン減税)
住宅借入金等特別控除・・・(漢字多すぎる…)
住宅ローンを組んだ場合に、年末残高の0.7%を所得税と住民税の額から差し引く減税措置です。
年末残高の0.7%?所得税と住民税?減税措置??
新築であれば13年間、要件を満たした中古であれば10年間受けられます。
ちなみに全員が対象では無くて住宅のサイズやローンの返済期間、所得の制限などがあります。
???
実例で見てみると分かりやすいので、具体例を見てみましょう。
ここから先は「ローン減税」と表現していきますね。
具体例
Aさんの場合
年収 500万円
住宅ローン 3000万円
金利 0.5%
ローン期間 35年
購入 新築物件
→ローン減税メリット合計:約220万円
220万円?!
似たようなケースでローンの金額を増やしたバージョンも見てみましょう
Bさんの場合
年収 500万円
住宅ローン 3500万円
金利 0.5%
ローン期間 35年
購入 新築物件
→ローン減税メリット合計:約240万円
240万円?!さっきより20万円アップ!
年末の残高ベースで減税額が決まるので、住宅ローンの金額が多くなるほど減税される金額も多くなります。
所得税の減税措置のため、年収があがったり、子供の数や年齢によっても変わりますので、約束された金額では無いことに注意が必要です。
50年ローンなど長期で組む場合の注意点
どうせ同じ金額のローンを組むのであれば長期で組む方が良いかもなー
なんで?
団信ついてるから家族に住宅は残せるし、これから子供にお金がどれくらいかかるか分からないし、月々の返済額を減らすには長期で組むのがいいかなーって。
なるほどねー
先生、ちなみにローン減税のメリットも大きくなりますか??
そうですね、返済の速度が遅くなるということは年末の残高も多く残りますので、その通りです。
やっぱ長期で組むメリット、大きいですね!
ただ金利について、注意が必要です。
借入れ期間が35年を超える場合、金融機関によっては金利が上がるケースもあります。
35年~50年の期間だけ金利が上がるのではなく
「借りている全期間の金利が上がり」ます。
「金利が同じ場合」と「0.15%高くなる場合」を見てみましょう。
金利:同じ
ローン期間:35年と50年の場合
住宅ローン 3500万円 金利 0.5% ローン期間 35年 月々支払い 約9万円 利息支払い合計 約320万円 | 住宅ローン 3500万円 金利 0.5% ローン期間 50年 月々支払い 約6.5万円 利息支払い合計額 約460万円 |
ローン期間:同じ(50年)
金利:0.15%高くなる場合
住宅ローン 3500万円 金利 0.5% ローン期間 50年 月々支払い 約6.5万円 利息支払い合計額 約460万円 | 住宅ローン 3500万円 金利 0.65% ローン期間 50年 月々支払い 約6.8万円 利息支払い合計額 約600万円 |
比較すると結構違いますね!
月々の支払額は魅力だけど、利息の額を考えると悩ましい…
住宅ローンの支払いだけではなく、家族の年齢や子供の教育に対する価値観なども含めて総合的に判断したいですね
まとめ
団信やローン減税のメリットがあるので50年ローンにしようと思っていたのですが、安直に決めない方が良さそうですね
はい、住宅ローンの特徴を理解したうえで検討したいですね
先生が出来るだけ長期で組むことを勧めている理由も理解出来ました!
住宅ローンは借りた後に内容を変更することが非常に困難な大きな固定費です。
自分たち家族の背景や価値観に合った資金計画とするために最初にしっかりと検討することが大切です。
今日の話をきいて、ご自身の住宅ローンはどのようにしようと思いますか?
35年で組んで、繰上げ返済をして退職時の30年後に支払い終える計画にしようかなーと思いました!
繰上げ返済の計画も今の段階から検討することが大切ですよ
家族構成やご自身の年齢、子供の年齢、教育に対する価値観、親の介護の想定や退職後のイメージ、手持ちの預貯金などにより住宅ローンの期間や住宅ローン金額の最適解は変わります。
「自分たち家族の場合は何年で組むのが良さそうかな?」
「繰り上げ返済するための原資を上手く作る財テクは?」
「そもそも住宅ローンの適正額はどれくらい?」
このような疑問に対する最適解はご自身の背景や人生の価値観、お金の価値観によって変わります。
きちんと整理した資金計画が大切です。
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